コムスプリングス戦線


「いい、皆で一斉に行くわよ」
「で、でもぉ〜…」
「僕も研究者として、気にはなっていましたので」
「すぐ行こう!やれ行こう!も〜〜〜とにかく行こう!」
「ミ…ミーシャ……」

ここはコムスプリングスの宿屋前。
ティピ、ルイセ、アリオスト、ミーシャの4人が扉の前で何かやっていた。
多分よからぬ考えなのだろう。
ミーシャの目がヤケにマジだからな……。

「おい、お前等何やってんだ?」
「!! ……アンタかぁ…」
「ほら、お兄ちゃんも何か行ってよ」
「何かって……何だよ?」

俺がアリオストの方を見て言うと、アイツは苦笑いしながら口を開いた。

「いえ、ウォレスさんの攻撃方法なんですが」
「ウォレスの攻撃方法?」

オウム返しに聞くと、ミーシャがアリオストを突き飛ばし、俺の前に出てきた。
アリオストは体制を崩し、地面に尻餅をつく。

「あのね、ウォレスさんって、今ブーメラン使ってるでしょ?」
「ああ。だが正しく言うと、ブーメラン系統の武器だが」
「アンタ、細かいわねぇ」
「俺を育てたサンドラに言え」
「ムッカー!マスターに『様』つけなさいよ『様』!!」
「黙れ虫」
「殺スッッ!!」

俺とティピは既にウォレスの事など当に頭に無かった。
無論、目の前に居るミーシャもだ。

「ちょっと〜!お兄様ぁ〜〜!!」

袖をグイグイ引っ張るミーシャ。
ゲームをプレイした人は分かると思うが、俺の服は中途半端にはだけている。
セクシーと御婦人方にモテている半面、結構歩きにくかったりもする。(汗)
その袖をグイグイ引っ張られれば、俺は自然と後ろに歩いてしまう。
そして、限界は訪れる。

「うぉっ!?」
「きゃぁぁぁ!!」

ドシーーン!!

げんのうをブンブン振り回すミーシャの怪力に、慣性の法則など通用せず、
無常にもアリオストの上に二人が倒れこむ。

「え、えぇーっと、ミーシャ君とキミの体重×重力+倒れ掛かってくる衝撃−…」
「どわぁぁぁぁ!!」
「ぎえぇぇぇぇぇ!!」
「お兄ちゃん!!」
「どっちがどっちの叫び声なんだか……」

そして、アリオストの計算も虚しく、俺たち二人はアリオストの身体に衝突する。
御丁寧な事にミーシャの奴、倒れる直前にぐるりと捻って俺との立ち位置を変えやがった。

ドガガガッッッッッッッ!!ドサリッッ!!

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!?」
「がはっっっっっっごふぁっっっっっっっ!!」
「うげぇぐばぁりゃべぇるぎぐぇどばでまにゃぐぇぇぇぇぇ!!」

縺れ合うようにアリオストの上に倒れる3人。
すごい音と声が温泉街に響き渡る。

「お…お兄ちゃんッッ!?!?…とその他の皆!!」
「あっちゃ〜〜、これが小説だから残念。誰が誰の声だったかが解らないからね」

俺は取り合えず上に乗っかっているミーシャを無視して起き上がると、アリオストに手を差し出す。

ゴトリ

「大丈夫か?」
「あ、ああ。だが、ミーシャ君が…(汗)」

地面に頭をぶつけ、気を失っているミーシャ。
ルイセはミーシャに気づき、キュアをかけている。

「…まぁ、泡も吹いてないし、瞳孔も開いてない。大丈夫」

腕組をし、ウンウン頷く。
どうせアリオストと衝突して目は回してるんだ。
今更気絶ぐらい唯のおまけにすぎない。
…と、勝手に決め付けると、宿内から悲鳴が聞こえてきた。

「キャァァァァァァァァァァァ!!!!」
「「「「!?」」」」

4人同時に悲鳴に反応する。

「な…何…?」

ゴトッ!

すくりと立ち上がるルイセ。
お陰でミーシャがまた地面に頭をぶつける。
今度は致命傷で、頭から出血している。
……が、皆悲鳴の方に気を取られていて、誰も気づいていなかった。

「……アリオスト」
「……ああ、解っている。ルイセ君、ティピ君と一緒にここに居てくれ」

二人とも剣を構え、慎重に扉の前へと近寄る。
そして、宿屋の中での悲鳴が一層大きくなった時、全ては始まった。

「一体何があったんだッッ!!」
「ウォレスさん!!」

ルイセが叫ぶと同時に、俺はアリオストと一斉に斬りかかった。
だが、その刃はウォレスの身体を傷つけることなく、空を斬る。
なぜなら・・・・・

「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

大音量のルイセの叫び声が、ここ温泉街に響き渡る。

「何だ?どうかしたか?」

平然な顔をして話し掛けるウォレス。
だが、俺とアリオストの反応は至極冷たい(キツイ)反応だった。

「「服位着ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」

ドガッッ!!

ウォレスの身体に二人の拳がめり込む。
だが、

「お、おお。済まなかったな」

とだけ言って、豪快に笑うと、そのまま宿内に消えていった。

「だ…ダメだ。あのオヤジ、全然解ってねぇ…」
「確かに…人間は初老を超えた辺りから羞恥心が薄れてきますから…」
「…そうだなっと、うちの妹はどうなった?」

振り返り、女性陣が居る方を見る。
すると、ルイセが青ざめた表情をしてティピの首を絞めていた。

「ど、どうしたんだルイセ!汚いモン見て気が狂ったか!?」
「失礼だが、その汚いモノは君にも付いているんだよ?」
「……。ルイセ!しっかりしろ!!」

取り合えずアリオストの発言を無視し、虫救出を図る。
作戦は至って簡単。ゲームシステムを悪用するのみ!!(爆)

「落ち着け…ルイセ」

ゆっくり抱き締めると、ルイセは虫を放し、落ち着きを取り戻す。
身体を離すと、にっこりスマイルを見せ、好感度UPを狙う。

「お兄ちゃん・・・・」

(チッ、どうでもいい奴の好感度上げちまったなぁ…ああ、ゼノス兄ぃ……)

締め付けから解放された虫は、深呼吸をして息を整える。
アリオストが近づき、小さい背中を摩っている。

「げほっ…げほっ…ルイセちゃんがアンタみたいにならなくてすんだわ…」
「どういう意味ですか?それは?」
「前科持ち」

虫、蝿叩き百打ちの刑決定。
第一キサマらも人を殺してるっつーの!

「あのね、お兄ちゃん……」
「あ?ああ、何だ?」

取り合えず作り笑いをしてルイセを和ませる。
するとルイセからとんでもない事実が告げられた。

「実は…私……」

俯き、少し話しづらそうな表情をする。
俺が微笑んでやると、ゆっくりと重い口を開いた。

「…魔法…かけちゃったの……テレポート……ウォレスさんに……」




 あとがき 


この物語を読む上に置いての疑問は色々あると思いますが、その辺は流しましょう。(笑)
ちなみに聖軌さんの主人公はゼノスLOVEだそうです。
ルイセへの発言はそういう意味合いが込められているのだとか。

続編を期待したい所ですが、ウォレスの処遇を考えると難しい所が……。
真っ裸で帰って来る男(と私は予想する/爆)をどう受け入れれば良いんでしょうか?
それ以前にウォレスはテレポートしたコトに気づけるのでしょうか?
疑問は尽きないです。(笑)


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送