熱き鼓動を胸に


ズザザザザ!

俺は急な斜面を駆け降り、敵からの追跡を振り切ろうと試みる。
土手を降り、雑木林を抜ける。
その視界の先に見えるのは……大きく開けた野原。
青く晴れた空の下、握り飯でも持ってこんな所で昼寝でもしたらさぞ気持ち良いだろう。

だが俺にはそんなことを考える余裕は微塵も無かった。

「何か隠れれる物は……」

視界が開けたその草原には隠れられそうな物はなにも無く、
俺に状況が悪化したことを知らしめるのには十分すぎた。

「やばい…このままじゃ殺られる…」

このまま緋勇龍斗は誰も居ない草原で不詳の死を遂げるのか?
否、断じて否ッ!何が何でも生き延びてやる!!

しかし気合だけではどうにもならず、絶望は直ぐ後ろに迫っていた。

「グァァァァァッ!!」

唸り声を上げた黒い塊が俺に向かって突進して来たかと思うと、
そのまま俺はソイツに地面へと叩きつけられた。

「しまっ…」

迂闊だった。
背後から来るものと警戒していたんだが、まさか側面から襲われるとは。
敵ながらアッパレ…とのんびりして居る場合じゃない。このままでは殺されてしまう。

「グルアァァッ!!」

バキッ!

「ぐッ…!」

そいつの凄まじい打撃が俺の頭部を捕らえた。
馬乗りになり、鋭い爪と強靭な肉体が折り合った見事な攻撃が繰り出されている。
どろりとした血が流れるのを感じながらも、俺は反撃に出た。
腹部に気を集中させそれを拳に乗せる広範囲且つ高威力な技。
もはやこいつに勝つにはこの技しか無い。

「螺旋掌ッ!」

ドムッッ!!

「グアァァァァァ!」

放った気が渦を巻き辺りの木々をバキバキと粉砕する。
黒い化け物は叫び声を上げると、俺の気に当てられ宙を舞った。
それを見てすかさず俺は立ち上がり、追撃を始める。

「でぇぇりゃぁぁぁ!!」

化け物に向け飛び上がり、気合と共に鋭い蹴りを放つ。
化け物の腹部に直撃しバキッとにぶい音がする。
手ごたえはあった。
ずうんと化け物が地に落ち、それとほぼ同時に着地する俺。

「立ってくれるなよ…立つんじゃねぇぞ…」

いつになく弱気な発言の俺。……しかし本音である。
こんな化け物とこれ以上殺り合いたくないのだ。
だが願いも空しく、化け物はゆっくりと立ち上がった。

「グルアァァ…」
「おいおい…マジかよ…」

化け物が中指を立てて俺を挑発する。
そして立ち上がった相手にどうするか考えている俺。
挑発されている場合ではない。

黒い化け物が拳を構え、目を細める。
どうやら次の一撃で決めると言いたいらしい。

「いつの時代も、闘いの基本は格闘という事か…」

いつの時代っていつやねんという突っ込みが黒い物体から入る。
軽く咳払いをし、俺も拳を構えた。
深く息を吐き呼吸を整え、全神経を拳に集中させる。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「グオォォォォォォォォォォ!!!」

二匹の獣が咆哮する。
そう、既に俺は人間という枠を越えねばならないほどに追い詰められていた。
誰しもが闘いの中では闘争本能を蘇らせる。
しかし、この場合は《闘争》ではない。
《自衛》だったのだ。

「うるぁぁぁぁ!!!!」

怒号と共に俺を中心とした大地が大きく抉れる。
流石に化け物も驚いたのか少し後ずさるものの、負けじと怒鳴り散らす。

「グキャルグブルアァァァァ!!」

化け物が地を蹴り宙に舞う。
その身を回転させて反動をつけ、天高くから踵を落とす。
「天空稲妻踵落とし」とでも名付けようか。
等とお気楽に考えていたら、アラ不思議。
目の前に踵が。

ズガァァァァァァァァァァン!!!

「う…そォ……!?」

視界が大きく上下にブレたと思った次の瞬間、強烈な痛みが頭部を襲う。
ダメージ=加速度×体重×重力−俺の頭部の堅さ
方程式はきっとこうに違いない。
そしてその方程式の答えは。

「イコール…ダメージ300ぅぅぅ……」

気合と根性で再起不能の縁から舞い戻って来る。
因に元最大体力は318。まさにギリギリ。
膝の上に手を置き軽く頭を払うと、再び化け物に目線を向けた。

「残念だったなぁ…」
「グルアァァ…」

脅えたように後ずさる化け物。
まぁ、脅えるのも無理のない話だ。
頭部からとめどもなく出血している上にじーっと睨まれたら、鬼でも泣いて帰るわな。

「んじゃ、そろそろ決めるぜぇぇ!!」

化け物に向け俺は駆けて行き、目の前で飛び上がった。
そのままポーンと化け物を飛び越し背後に着地する。
そして右手に乗せた気と共に拳を放つ。
それは空を切る刃となり、化け物を背後から襲った。

「大嵐リィィィ!!」

ごう、と嵐が背後から吹き荒れると、そのまま木々と一緒に化け物をなぎ倒して行く。

「グルアァァァァ!」

断末魔の叫び声だろうか、曾て無いほど大きな声を張り上げる化け物。
バキバキと音を立てて木々が折れていき、その音は次第に遠ざかったいった。

「…なんとか、勝てたな…」

俺は折れて倒れている木に近寄る。
するとそこには笹団子が!!


《龍斗は森のくまさんから笹団子を入手しました》



 あとがき 


初回プレイは探索を一度も使わなかったのでこの意味が分からなかったんですが、二度目のプレイで理解できました。(笑)
何故か森の熊さんから手に入れるんですよね。
他にも盗んでいるのか!?と思わず疑ってしまうような場所が他にも沢山ありますし……
一体どうなってるんでしょうかね、内情は。

今回の作品は恐らく皆が思ったことであろうコトをリアルに表現している所がツボに入りました。
ひーちゃん命懸けです。(笑)


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送